Spa & Wellness Insight

Mariza 氏
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ESGとウエルネス

Board Member, Global Wellness Summit
株式会社Conceptasia 代表取締役
相馬 順子 氏

2017年10月、フロリダ・ロングビーチで行われたGlobal Wellness Summitでは、ESGに関しての興味が最高潮に達していました。投資家グループのラウンドテーブルでは、ESG投資に関しての活発な議論が交わされており、日本からラウンドテーブルに参加した私としては若干日本との温度差を感じてしまったものです。今年2018年になり、日本でもESGに関して大きな関心がもたれるようになってきました。

そもそもESGとは何なのでしょうか?

 ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったものです。企業がこの3つの観点にどれくらいの比重を置いているかで、将来的にリスクの少ない運営、すなわち長期的な成長・サステイナブルな経営を続けることができるのかを投資家として判断する、重要な指標となってきているのです。ESG各項目に関しての観点が薄い企業は、大きなリスクを抱えた企業であり、長期的な成長ができない企業だとして、企業の株主である機関投資家の間で、投資の意思決定にかなり重要視されるようになってきているのです。従来の財務情報だけでなく、リスクをESGという形で見るようにしているともいえましょう。ただ、日本企業としてもにわかにESGといわれても、環境に対する施策や企業統治を急にどのように上げていくのか?そもそも、考え方や指標の違いを踏まえてどのようにしていったらよいのか、とても難しい問題もはらんでいると思われますし、実際機関投資家の中には、ESGをあまり気にしていないような米国の年金運用者などの話も聞くに及んで、日本には日本企業が特に世界に対して秀でているESGの指標があると思うようになりました。

写真1

 私たちGlobal Wellness Summitで話し合われる重要なトピックスのひとつに「職場におけるウエルネス」というものがあります。下の図をご覧になってください。この分野はWork Place Wellnessというカテゴリー(オレンジ)に分けられており、市場規模は現在USD 43Billion 現在の円ドルレートが111円なので、日本円に換算すると、世界で約4.8兆円となります。このHuman Capital Management(HCM)とよばれるカテゴリーは、日本が他の国々に先行して強化できる分野なのではないかと思います。
 日本が導入している、健康保険制度や企業が運営している福利厚生というのは、世界的に見ても非常に優れたシステムであるといえます。日本的な雇用習慣も従業員の精神的な支えになっているといえるのではないでしょうか?長時間労働やうつ問題など、世間を騒がせている問題が起きてはいるものの、世界的にみれば、日本のシステムはかなり秀でたものであります。長期雇用ゆえに生まれる問題も確かにありますが、従業員に対しての投資を企業もさらに増やすという行動は取りやすいと思うのです。

図1:ウエルネス産業の経済規模(2015年)は、3兆7千億米ドル
(オレンジのバブルがWork Place Wellnessの経済規模となる)
図1
図2:ウエルネスプログラムを職場で得ている人たちの割合(2015) 図2

HCMは企業が長期的に発展する重要な投資

 現在、地域別でみると、アジアパシフィックはほかのエリアに比べて、Work Place Wellnessの分野で遅れているように見えます。ただ、日本の企業が、健康保険組合や福利厚生を通して、手厚い従業員ベネフィットを行っていることは、まだどこまで海外の投資家の間で理解が進んでいるのか、また、日本的な雇用システムも、賛否両論はあるものの、正規従業員にとっては精神的に安定を得ることができる殊勝なシステムであると思われます。HCM (Human Capital Management)は、コストとみられておりましたが、これこそ企業が長期的に発展する重要な投資であるとESGのレポートでは指摘がされているのです。企業の発展が、健康で幸せな従業員の長期的な寄与によってなされているということを、欧米の機関投資家が重要視しているということなのです。最近のGWSの会議には、このWork Place Wellness(職場でのウエルネス)の分野でGoogleなどシリコンバレー系の会社が担当者を参加させてきています。またホテル業界も、法人や個人顧客のため、新しい役員のポジションを創設しはじめました、Hyattグループが最近発表したその名も“global head of wellbeing”に、私のGWSの同僚Mia Kirico氏がVice Presidentとして迎えられました。

写真2

 日本でESG投資先としてピックアップされている企業をみますと、資生堂にしてもサントリーグループにしても、従業員への投資や働きやすさに取り組んでいる企業が多いようです。環境、社会、ガバナンスとこれからの企業が避けて通れない課題の中で、特に働いている人や、お客様に健康で幸せな生活を真摯に届けてくれる会社は、日本の良き時代を取り戻してくれる企業として、大きな期待を寄せたいと思っています。

相馬 順子(そうま よりこ)
株式会社Conceptasia(www.conceptasia.jp)代表取締役。Global Wellness Summit(www.globalwellnesssummit.com)ボードメンバー。Boston Consulting Group香港オフィス勤務ののち、ウエルネス事業に対するアドバイス、投資を行う会社を設立。著名ブランドのスパを国内外に次々とオープニングさせてきた。